63 2018年06月大阪・福島に今春お目見得した「JanSun」は、今の時代にぴったりな懐に優しい店。ワインを中心に色んな酒が揃い、創作料理に舌鼓を打つ_、そんなコンセプトになっている。この店の料理を任されているのが林幸司さん。かつて辻学園TEC日調で教師を務めていた人で、料理に関してはかなり多くの引き出しを持っている。そんな林さんが価格を抑えめに考えた創作料理を作るのだから評判にならぬはずはない。今回はオープンして間もない「JanSun」にお邪魔し、いつものアレを行って来た。百戦錬磨の料理人・林幸司さんは、いかに湯浅醤油と丸新本家の商品を使いこなしたのか?とくとご覧あれ。

JanSun(ジャンサン) 林幸司
(「JanSun」スーパーchef)
「オリーブ金山寺は、かなりユニ
ークな発想から誕生した商品で
すね。オリーブが入ることによ
って甘みやコクが金山寺味噌に
一層加わります。せっかくユニ
ークな発想で考えたのだからと、
私も頭をひねって料理をしました」

下町風情を残した創作居酒屋

 

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大阪・福島はいつのまにか飲食店の街になってしまった。かつてはキタ(繁華街)に最も近い下町と親しまれ、多くの民家が建ち並んでいた。それが駅周辺の一部が軒を飲食店に貸したことで、町家風情溢れる飲食店街を創出。その成功に右へ倣えとばかりに色んな家が一階を店舗に貸し出し、どんどんその事例が街にあふれていったのだ。今では、下町の雰囲気を醸した飲食店街というところか。家賃もキタやミナミと比べて高くはないのか、一流どころのシェフの独立の場所としても目立って来ている。
今回紹介する「JanSun(ジャンサン)」も福島によくある仕舞た屋風の店。ジャンルとしては安価に楽しめる創作料理の居酒屋というところだろうか。「JanSun」は今春お目見得した阪神福島駅近くの店だが、これができるにあたって西中島にある「Jan」なるラウンジが因している。「Jan」も「JanSun」もオーナーは、梶野靖子さん。「Jan」自体は21年の歴史を有す店で、西中島ではすでにおなじみだそう。21年も歴史を持つと、そこで働いていた女性が多く巣立っている。彼女らは結婚などを機に家庭に入ったのだが、ある程度子育ても一段落したらまた働きたいとの思いに駆られて来た。「Jan」のOGが集えて働ける場所を梶野さんが提供しようと考えて福島で物件を探した。それが「JanSun」なのだ。なので「JanSun」は「Jan」のOGばかりが交代で店を切り盛りしている。昔とった杵柄ではないけれど、酒の知識もあってしかも薦め上手。酒メニューも安価なためについつい飲んでしまう。それくらい心地いいということだろう。

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「JanSun」については、もう一人の人物のことを語らねばならない。それはかつて中之島TEC日調で教壇に立っていた林幸司さんである。林さんは同校を辞めた後にいろんなジャンルの店を手がけて来た。単なる料理人としてだけではなく、プロデューサー的手腕も発揮しており、和洋中、そしてエスニックと幅広い引き出しがある。梶野さんとは旧知の間柄で、それを手伝おうと話がまとまったのだとか。林さんが以前プロデュースした店と契約が残っていたこともあって当初はランチだけの営業で店を開き、彼を待って3月にグランドオープンしている。

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「JanSun」の一つの売りは、餃子(380円)である。これは梶野さんが20年以上前に十三の屋台時代に提供していたメニューで、この復活を兼ねて「JanSun」の売りにした。テーブルには醤油、酢、黒酢、ラー油、黒胡椒と5つの薬味が置かれ、これを好みに合わせてタレにして餃子を食べるシステムだ。林さん曰く「初めは何も漬けずに味わってそれから好みでタレを合わせて食べてほしい」とのこと。林さんのお薦めは、酢と黒胡椒を調味したタレだ。豚ミンチ、キャベツ、ニラに一味を利かして作った餃子はしっかりめの味。なので林さんが言うように何も漬けずとも味わえるのだろう。「オススメの酢と黒胡椒は、さっぱりした味わいになっており、お酒も進みます」と林さんは薦める。その他に黒酢とラー油でもいいそうだが、勿論、一般の餃子のようにラー油に酢醤味でも美味しさは伝わる。店ではこの餃子にスパークリングワインを合わせて一杯飲ってほしいと薦めており、銘柄がわからない時は女性スタッフが丁寧に教えてくれる。
イチ押しの餃子の他は、林さんの創作料理が並ぶ。だし巻き玉子の上に甘辛く煮た牛こま切れ肉を載せた「牛スキだし巻き」(680円)や、パプリカ、キュウリなどの野菜と魚介類をマリネした「マルセイユ風マリネ」(680円)、しっとりして旨みの強い大山鶏をタタキにしたもの、鶏もも肉を黒胡椒焼きにした料理と、居酒屋的メニューが充実しているのが特徴であろう。林さんは「お酒二杯に料理三品ぐらいに頼めば2000円台に納まるよ」と言う。「3000円ならけっこう飲める」と表現するのもわからなくない価格帯で、値上がり、値上がりで家計を逼迫しつつある昨今にあっては嬉しい限りの店に違いない。

オリーブ金山寺をサンドイッチに

 

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「JanSun」は、まだまだ新しい店なのでメニューも今後変化していくかもしれない。新作考案ではないけれど、今回の取材(私へのスペシャリテ)もその候補になれば嬉しい限りだ。そんな期待を込めつついつものアレを敢行した。本取材に対し、新古敏朗さんはいくつかの商品を林さんに手渡している。そのうち彼は「赤みそ」「柚子梅つゆ」「オリーブ金山寺」を選択して料理を考えてくれた。「添加物が入っていないので味噌自体の旨みがわかり、使いやすい」と話した「赤みそ」については、味噌自体の風味を損なわないようにと、あえて冷製料理にチャレンジした。「焼き茄子の冷やし赤味噌汁」と題したそれは、冷たい味噌汁といった雰囲気で、これからの季節らしく焼き茄子をメイン素材にしたものだ。「焼き茄子を味噌汁感覚で味わってもらおうと作りました。冷製ポタージュやビシソワーズのように和の味噌汁を感じてもらうべく、冷たくして供します」と林さん。一番だしを摂って冷たくして作るそうで、温かくせずに「赤みそ」を溶くのがポイントだとか。「こうすることで味噌本来の香りや旨み、酸味が味わえるんです。どうしても火を通してしまうと、香りや栄養分が飛びがちに。40度を超えると味噌の発酵した菌が死ぬといわれています。この理論からすると、本来は冷製の方がいいのかもしれませんね」となかなか論理的な思考のよう。流石、元調理師専門学校の先生という話っぷりだ。冷たくした味噌汁だけを味わうと濃い印象を受けがちだが、具が沢山入るとそうでもない。具材を食べると口内でバランスよく感じるのは、林さんならではの設計であろう。

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「柚子梅つゆ」を使った「鶏胸肉の柚子梅つゆ南蛮」は、タイトルからもわかるように鶏の南蛮漬風の料理である。林さんが旨みがあると以前から多用する鳥取の大山鶏を使用したものだが、これを夏イメージで作っている。さっぱりとした鶏胸肉を天ぷらにして希釈せずに「柚子梅つゆ」をかけて作る。「しっかり味が入るように『柚子梅つゆ』をかけます。柚子と梅の風味が淡泊な鶏胸肉によくなじむようにしているんです」と説明してくれた。そのままでも十分美味しいのだが、タルタルソースを添えたのは若い人を意識してのことらしい。「濃厚な味を欲する人は、タルタルもつけて味わってほしい」と言う。「淡泊な胸肉には『柚子梅つゆ』をかけることで味が引き立つんです。柚子と梅がバランスよく配合されているせいか、冷奴や素麺、和え物と色んな料理に使えます。動物性蛋白質との相性がいいので焼魚なんていうのも合いますね。」

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今回の三品のうち、林さんがイチ押ししているのが次の料理。試食したところ「オリーブ金山寺味噌とだし巻玉子の和風サンド」は、意外性のあるものとして光っていた。「金山寺味噌というとご飯に載せて食べる印象でしょうが、今回は食パンと合わせてみました」と出して来たそれはまさに見ためもサンドイッチ仕様で、ボリュームもある。「初めは当店の売りの餃子のタレに『オリーブ金山寺』をと考えていたんですが、この商品は今までにないユニークなもの。せっかくメーカーが頭をひねって商品化したのだから私も考えないとと思って方向転換してサンドイッチに使ったんですよ」。食パンに「オリーブ金山寺」を塗り、キュウリとマヨネーズと和えた人参をその上に載せる。そしてだし巻玉子を載せて食パンでサンドする。「キュウリを間に入れたのは、もろきゅうのイメージで。このサンドイッチは、だし巻玉子と金山寺、マヨネーズと金山寺という好相性の連続性を表したものです。これは最近流行のだし巻玉子サンドにしましたが、パンを焼いてトーストにしたなら鶏もも肉のソテーや豚生姜焼を入れた方が合うかもしれません」。林さんは6枚切りの食パンを使っており、焼くよりソフトなタッチで食べさせたいと思っていたようだ。「焼くと口当たりが変わるので中はだし巻のようなソフトなものではなく、肉を用いたワイルドなものにした方がいいですよ」と教えてくれた。林さんの「オリーブ金山寺」評は、オリーブの甘みやコクが金山寺味噌にうまくフィットしているというものだった。「さらに私ならここにナッツ系(くるみ、茹でピーナッツ、松の実など)を入れて作ります。ナッツの食感があるともっと美味しく感じます」。
林さんは「オリーブ金山寺味噌とだし巻玉子の和風サンド」がかなりお気に入りのようで、「いずれメニュー化するかも」とまで言っていた。メニュー化するとなると、このボリューミーさをどうするかが課題である。なぜならこれ一つ食べたらかなりお腹が膨れるからだ。そんな話をしつつ、今回の取材を楽しんだ。引き出しのいっぱいある料理人は常に前向きである。こんな遊び的感覚の中からも何かを生み出そうとしている。国道2号線から一筋入った路地にあり、少々わかりづらい場所の「JanSun」がオープン以来賑わいを見せているのは、林さんのこんなチャレンジ精神も一つの要因かもしれない。懐に優しいこんな店が流行ってくれることが我々消費者には朗報である。

 

  • <取材協力>
    JanSun(ジャンサン)

    住所/大阪市福島区福島1-5-12

    TEL/06-6454-1920

    営業時間/11:00~15:00 16:00~23:00(22:30LO)

    休み/日祝日

    アクセス/旬魚のカルパッチョ 780円
    本日のお造り 860円~
    大山鶏のタタキ 680円
    牛スキだし巻 680円
    マルセイユ風マリネ 680円
    肉巻き玉子 450円
    自家製ローストビーフ 1200円
    餃子 380円
    天ざる 980円

筆者紹介/曽我和弘
廣済堂出版、あまから手帖社、TBSブリタニカと雑誌畑ばかりを歩いてきて、1999年に独立、有)クリエイターズ・ファクトリーを設立した。特に関西のグルメ誌「あまから手帖」に携わってからは食に関する執筆や講演が多く、食ブームの影の仕掛け人ともいわれている。編集の他に飲食店や食品プロデュースも行っており、2003年にはJR西日本フードサービスネットの駅開発事業に参画し、三宮駅中央コンコースや大阪駅御堂筋口の飲食店をプロデュース。関西の駅ナカブームの火付け役となった。

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