73 2019年04月 ふぐに伊勢海老、鱧、クエ、鯛と、客が呼べる海鮮系はいくつかある。その一つが牡蠣だろう。牡蠣は広島県や三陸地域、兵庫県など色んな所で水揚げされるが、場所が変われば味も変わるという。昨今は漁師めしブーム(筆者もそのブームの仕掛け人の一人だが…)の影響で、産地まで車を走らせて食す人も多いようだ。当然ながら魚介類は、産地で味わうのが一番美味しい。けれど殊、牡蠣に限っては鮮度の高い産地とて安全性まで担保されているかはいささか疑わしい。そんな風に考えていたら、新鮮さと旨さに加え、安全性まで考えて牡蠣を提供している会社があった。今回はその系列の一つ、「オイスタールーム梅田ハービスエント店」で、いつものアレをやってみた。商品開発を担当する柴田慎一さんが作った三つの料理をとくとご覧あれ。

オイスタールーム梅田
ハービスエント店
柴田慎一
(ヒューマンウェブ商品開発室兼西日本営業部部長)
「燻ししょうゆを味わった時、はっ
きり言ってびっくりしました。ほ
んの少し垂らしただけで燻製の香
りを強く発します。アクセントで
いいので、少量でも使いたい_、
そんな衝動に駆られました」

独自の洗浄システムでより安全な牡蠣を

 

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牡蠣は美味しいが、リスクのある食材_、そんな言葉を耳にする。だが、鯛やふぐなどと並んで日本人が欲する食材の代表でもあり、グルメ達は、常にそれを求めてやまない。そもそも牡蠣とは、ウグイスガイ目イタボガキ科とベッコウガキ科に属す二枚貝の総称で、海の岩からかきおとすことから牡蠣と名づけられたようだ。我々がよく口にする(食べる)のは、真牡蠣と岩牡蠣の二つである。前者は冬から春が旬とされ、水揚げの多くは10月~4月半ばで、旨みが凝縮されてクリーミーな味わいがある。片や、後者は夏の産物。6月~8月と、水揚げは早いものは3月頃から始まり、メインは約3カ月間で、真牡蠣に比べると大きく、肉厚もあってジューシー。大きさのわりに繊細な味がする。「牡蠣は美味しいのはわかっているんですが、1~2度あたった経験があるんで、どうしても敬遠しがちになってしまいます」とは、私のスタッフ。以前は平気で食べていた(むしろ好物だった)らしいが、あたってからは頻繁に食さなくなったらしい。そんな話をしていたら湯浅醤油の新古敏朗さんが「オイスタールーム梅田ハービスエント店」を紹介してくれた。

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同店で会った日本かきセンターの松倉弘幸社長の話がなかなか興味深い。「オイスタールーム」は、ゼネラルオイスターから派生した店舗。同社は吉田琇則社長が営む、かきの六次産業化を目指した企業で、直営店舗に加えて種苗生産拠点と浄化施設などを有し、牡蠣を新鮮なまま提供するだけではなく、より安全なものとして消費者に提供している。その系列に店舗運営のヒューマンウェブがあり、外販事業としての日本かきセンターがあるわけだ。吉田社長は産直で仕入れていた牡蠣をより安全性を期すために自社で浄化をやろうと決め、かつて広島に合った拠点に全国で獲れたものを集めた。それがきっかけとなって安全性を追求し始めた。そもそも牡蠣は、紫外線殺菌を行ってから流通に回すがルールになっている。だが、自分達の手で安全性を担保したかったようだ。「我々は生産者に依存せず、独自で紫外線殺菌を行ってから店に出そうと考えたのです」とは松倉さん。富山県の入善町に海洋深層水かきセンターを設け、全国津々浦々で獲った牡蠣をそこへ集める。そして384mもの深海から海洋深層水を用いながら洗浄するのだという。「一般的な浄化では、菌を殺せますが、同時に栄養も失ってしまうのです。海洋深層水には、牡蠣が好物のミネラルが豊富に含まれているので、洗浄しても牡蠣が痩せていく心配がないんですよ」と松倉さんは、独自の洗浄システムの優位性を教えてくれた。牡蠣は本来、産地で食べるのが一番旨いといわれている。ヒューマンウェブの各店舗では、店で食す時に最もいい状態にできるように紫外線殺菌と海洋深層水を水槽の中でかけ流すことにより、安全性を担保するだけではなく、新鮮かつ美味な状態で出しているという。まさに画期的で、「オイスタールーム」や「ガンボ&オイスターバー」が評判を呼んでいるのもよくわかった。ここなら牡蠣が少々苦手な人でも安心して食せるものと理解したわけである。

和の調味料をうまく洋風店舗で表現

 

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ところで、私は松倉さんに「オイスタールーム」の評判とその理由を聞くだけでなく、いつものアレ(・・)をやりたくなった。そこで新古敏朗さんから醤油や金山寺味噌を「オイスタールーム梅田ハービスエント店」に送ってもらい、それらを使って私だけのスペシャリテを取材用として試作してもらうことにした。
この挑戦を受けてくれたのは、柴田慎一さん。ヒューマンウェブでは、商品開発を行っている部長にあたる。肩書きはそうなっているが、実はイタリアン出身の料理人で、「何事にもチャレンジせずにはいられない」というタイプらしい。東京出身だが、2012年からは大阪に赴任し、現在西日本の店舗の料理を見ている。

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柴田さんが湯浅醤油や丸新本家の商品特性を考えて創作したのが三つのメニューだった。一つめは、やはりこの店の特徴を示すべき生牡蠣の料理。「白搾り」で調味した鯛のタルタルをソース代わりに用いて食べるように設計した。「白醤油は、普段使わないので色々と思案しましたが、エシャロットとオリーブ油、ビネガーを合わせてカルパッチョのソースにして食べてみたんです。すると、うまく合ったので牡蠣のソースでもいけると判断したんですよ」と柴田さんは説明していた。鯛を選んだのは、素材自体の味に強さがないからで、この方が牡蠣の味が残ると考えた。「白搾り」も味が強いので、兵庫県産の牡蠣の深い味にマッチする。「白搾りベースの鯛のタルタルを生牡蠣にかけて食します。牡蠣も濃厚なので醤油にも負けませんし、かと言って醤油風味も残ります。まさに牡蠣の新しい食べ方ができましたね」と試作品にご満悦のよう。洋風ベースのオイスターバーで、なぜか和の醤油が存在感を放っている。特に色がつかない白醤油なので、生牡蠣そのものを邪魔することもないし、色がつかないのもいいようだ。

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二つめは牡蠣の炙り。これには「わさび金山寺」でムースを作り、炙った牡蠣をうまく合わせている。牡蠣は火を入れることでたっぷりあった水分を飛ばし、旨みを凝縮させる。そこに「燻ししょうゆ」を少し垂らし、燻製香をつけているのだ。「炙った牡蠣とムースを一緒に食べてください」と柴田さんがアドバイスしてくれたが、一口食すだけで金山寺味噌と牡蠣が実に合うことがわかった。柴田さんは、牡蠣ペーストのムースをよく使うそうだが、今回はそのペースト代わりを「わさび金山寺」が務めている。「わさび金山寺は、複雑な味がします。甘みが強いのでペーストにしても甘みが残るだろうと思い、緩和するためにマスカルポーネを用いました」。こうすることで金山寺味噌のパンチを消したのだという。牡蠣は塩味が強いから甘いムースと一緒に味わうとよくマッチする。ただ、この店は洋風なので基本和のライン(いかにも和の調味料を用いたこと)は出したくなかったのだろう。だからマスカルポーネで甘みを緩めていたのだ。柴田さんは「燻ししょうゆは、はっきり言ってびっくりした商品です。燻香が実にうまく出ていますよ。醤油の切れもいいので、どうしても使いたくなりました。そこで味の変化を醸すべくちょっぴり垂らしたんです。『わさび金山寺』のムースだけでもよかったんですが、さらにアクセントが加わってよくなりました」と話していた。

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最後は牡蠣のリゾットである。リゾットの中には牡蠣を入れず、牡蠣のだしで仕上げたどちらかというと和風っぽい味。「牡蠣のだしと牡蠣で煮た大根に梅肉(「㔟粋梅」)を加えて作っています。シンプルなチーズリゾットにしたので、上には見ためのアクセントも兼ねて牡蠣のバターソテーを載せました」。このバターソテーとて牡蠣醤油を煮詰めて味付けている。味は全体的に薄めに感じるが、牡蠣を絡めて食べると味が中和され、いい塩梅になっていく。塩梅(あんばい)とは、よく出来た文字で調味料の塩と梅酢を合わせたことから生まれた。味の加減を指すことからも昔の調味具合がよくわかる。話が横に逸れた。話を元に戻そう。ここでちょっとした難問をぶつけてみた。「ところで『㔟粋梅』を用いたのはなぜですか?」と柴田さんに聞いてみたところ、「当初は生牡蠣に用いようかと思ったんですが、どうしても『白搾り』が気になっていたんでそちらには使わず、このリゾットに使ってみたんですよ」との回答。牡蠣醤油がけっこう甘めだったのでそこに梅肉が合うかなと思ったそうだ。「一般的にはリゾットや炊き込みご飯に梅肉が合うのと同じで、この牡蠣のリゾットにも梅肉がよく合います」と説明していた。こんな所にも柴田さんのチャレンジ精神垣間見られるのだ。

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さて、今回取材に協力してくれた「オイスタールーム」とはどんな店だろう。ヒューマンウェブで、西日本エリアの営業を担当している山本孝二部長に少し話を振ってみた。同社が運営する店舗は、大阪にはこの店の他に「ガンボ&オイスターバー」として梅田NU茶屋町店となんばパークス店があり、阪急グランドビルにも「ウメダステーションオイスターバー」がある。「オイスタールーム」は、それらのアッパークラスで、フルサービスのディナーを提供している。「1ランク上のオイスターバーを目指してオープンしました。このブランドは、梅田ハービスエント店が最初で、次に名古屋ラシック店が誕生しているんです。『ガンボ&オイスターバー』がカジュアルなのに対し、ここはアッパー向け。なので接待でもよく使われるんです」と山本さんは言っていた。梅田ハービスエント店には遊木料理長もいるが、柴田さんは関西全体を見て商品開発をしているらしい。「ここに来たら『真牡蠣3ピース食べ比べ』をして欲しいですね。全国色んな所の牡蠣が届いており(全て富山の自社センターで洗浄済み)、所変われば味変わるのように各地の味を食べ比べするといいですよ」。ちなみに取材日は、坂越、岩見、相生、室津(全て兵庫県)に、北海道サロマ湖、長崎県小長井、福岡県門司の牡蠣がラインナップされていた。アラカルトで1ピースごとでも注文できるそうだが、「割高になるのでプレートで食べ比べをして欲しい」との話だった。山本さんが言うように牡蠣は、産地によって味が異なる。同じ産地のものでも時期が変われば微妙に味に違いが出る。そういったことからもリピートする楽しみがある。安心して新鮮で旨みのある牡蠣を楽しみたいのならここほど適した店はあるまい。

  • <取材協力>
    オイスタールーム梅田
    ハービスエント店

    住所/大阪市北区梅田2-2-22 ハービスPLAZA ENT5階

    TEL/06-6451-5118

    営業時間/平日11:00~15:00、17:00~23:00
    土日祝11:00~16:00、17:00~23:00


    休み/無休

    メニューor料金/
    ENTコース  5500円
    牡蠣三昧コース 5500円
    スペシャリテコース 7490円
    焼き牡蠣1ピース 500円
    牡蠣のバターソテー2ピース 980円
    和牛ロース肉とフォアグラのソテー「ロッシーニ」 3580円
    オマールエビのロースト 2580円
    牡蠣と九条ネギのペペロンチーノ 1380円
    ランチ 岩牡蠣三昧コース 3450円
    オイスターコース 2750円
    ランチコース 1850円


筆者紹介/曽我和弘
廣済堂出版、あまから手帖社、TBSブリタニカと雑誌畑ばかりを歩いてきて、1999年に独立、有)クリエイターズ・ファクトリーを設立した。特に関西のグルメ誌「あまから手帖」に携わってからは食に関する執筆や講演が多く、食ブームの影の仕掛け人ともいわれている。編集の他に飲食店や食品プロデュースも行っており、2003年にはJR西日本フードサービスネットの駅開発事業に参画し、三宮駅中央コンコースや大阪駅御堂筋口の飲食店をプロデュース。関西の駅ナカブームの火付け役となった。

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