67 2018年10月 子供を持つ母親にとって食事は大事なアイテム。身体に大切な栄養をうまく摂らせたい、好き嫌いをなくしたい、色んな食材を食べさせたいなど、その思いは尽きない。毎日の献立を考えるのは大変だろうと思い、ある主婦がひとつのソースで色んなアレンジができ、調理の複雑さを軽減できるような商品を考案した。それが六甲アイランドにある「ソース工房FONTE」で、営んでいるのは同人工島に住む主婦・竹原愛さんである。竹原さんの店は、コンセプトを知ってか、小さな子供を持つママ達で一杯。時には保育園と見紛いそうな雰囲気が充満するほど賑わっている。今回はそんな六甲アイランドの人気店で、いつものアレをやってみた。主婦であり、オリジナルソースの研究者であり、店のオーナーでもある竹原さんは、いかに湯浅醤油・丸新本家の商品を使いこなしたのであろうか。

ソース工房FONTE 竹原愛
(ソース工房FONTE店主)
「濃口醤油のように素材に色がつか
ないし、料理しやすい味がいいで
すね。『白搾り』を湯で割っただ
けなのにだしのような風味に。
なのでシンプルにそれだけで炊き
込みご飯にしてみました。」

主婦が作るオリジナルソースが評判に

 

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平日の午後_、六甲アイランドにある「FONTE」の扉を開けると、まるで家の中で遊びに興じるかのように子供達が玩具に夢中になっている。連れて来たママ達は、これまたママ友会の如くゆっくりお茶を楽しんでいるのだ。「うちはまるで学童のようです」と話すのは、「FONTE」の店主・竹原愛さん。彼女は六甲アイランドの住民で、4年前にこの店を開いた。きっかけは自身の子育てが一段落ついたのと、子供を持つママ達の料理軽減を図りたかったから。オリジナルで作ったソースを店で販売し、それを用いることで調味にバリエーションを設けてみては…と提案したかったという。そのソースが評判を呼び、ママ達が「FONTE」を訪れるようになり、いつしか学童のような雰囲気になってしまったのだそう。「初めはお母さんが子供を連れて来て店内で遊ばせていたのですが、いつしか子供だけで来て宿題も店でやるようになりました。六甲アイランドには、子供が多いわりに子供達の行き場所(店)がないんですよ。だからママ達には重宝してもらっているようです」と竹原さんは言う。最近は、カフェやランチ利用者だけではなく、ここで"子育てママのためのハンドメイドレッスン"も催しており、講師が来てランチ付きで教えている。そんな場としても活用されており、まさに島(人工島)の憩いの場といえよう。

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「FONTE」を営む竹原さんは、広島・三好の出身。小学生時にすでに、「将来は調理師になる」との目標を立て、高校へは進学せずに広島の調理師専門学校へ進んだ。同校では中華の先生に師事し、某有名ホテルから誘われるほど優秀だったそうだ。とはいえ、事情もあって地元で就職。カフェや養鶏場も兼ねた肉処理施設で働いた後に結婚し、神戸へ居を移した。当初は自宅で料理教室のようなことをやっていたが、ソースづくりが本格化し、島内に店を持つに至った。家庭で作っていたレシピに改良を重ねて商品化したそうだが、これがなかなか使い勝手がいいと口伝手に広まり、今では「超辛ラー油」(550円)や「ドレッシング」(400円)、「黒酢ソース」(500円)など15種類を販売している。「FONTE」で出している。「黒酢すぶた」もそのうちの「黒酢ソース」で調味したもの。甘酢炒めなど用途も幅広いとあって求めて行く人が多いらしい。「BBQソース(450円)は、単なるバーベキュー用だけではなく、焼そばやそぼろ、炒め物、生野菜にも使えます。市販の焼きそばソースに比べると、味が複雑なので一味違った風味が楽しめます。これに超辛ラー油を加えれば、また異なった味に変化するんですよ」。竹原さんは、自分の作った味に固執せず、色んな人の意見を聞きながらソースづくりを行っており、「今は研究が面白い」と語る。まさに食品メーカーの研究者の如く、ソースづくりを熱心に行っているのだ。

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"家庭で気軽に使えるソースのお店です"と銘打った「ソース工房FONTE」では、カフェ利用は勿論のこと、ランチも評判を呼んでいる。「チョイスランチ」は選択する料理2品が1000円で、3品なら1200円(予約制)。料理は四川麻婆豆腐、油淋鶏、黒酢すぶた、棒々鶏、鶏ネギ漬けうどん、四川担々麺など13種のうちから選ぶことになっている。その他、「おまかせランチ」もあってこれは「チョイスランチ」と同じ値段。「スペシャルランチ」は6名からの予約で2500円である。「FONTE」らしくメニューの中には「キッズランチ」もあり、未就学児200円、幼稚園児300円、小学生500円という値段。これを見てもママ達が通い詰めるのがわかる。

まるでだしいらず!醤油だけで炊き込みご飯

 

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こんな「FONTE」のオーナー・竹原さんが、湯浅醤油・丸新本家の商品をいかに使ったのか。もともと中華の料理人だけに、いかにも中華風のものが出て来るのかと思っていたら、和の炊き込みご飯が登場したのにはびっくりした。竹原さんが湯浅醤油から送られて来た「白搾り」を見て、「素材に対して濃口醤油のような色が付きにくいし、料理しやすい」と感激し、だし代わりに使ってやろうと炊き込みご飯を作ることにしたそうだ。米を研いで2合まで水を入れ、刻んだ椎茸を加え、「白搾り」と「勢粋梅」、ほうじ茶のティーパックを入れてシンプルに炊いたのがこの炊き込みご飯。「一般的に炊き込みご飯を作る際にはだしを入れないと物足りない味になるのですが、『白搾り』だと、だしがなくても大丈夫。醤油を湯で割るだけでだしのようになったので、あえて醤油だけで調味することにしました」。ほうじ茶を用いたのは、梅干(勢粋梅)=お茶漬をイメージして。お茶が入ることで梅干の塩分をまろやかにして煮出す効果が得られる。「醤油だけなのにだしの役割りを務めているのが凄いでしょ。グルタミン酸を含む椎茸だけでは味的には寂しいので『勢粋梅』を加えました。これがさっぱりさせてくれる要素に。飾りには大葉を載せましたが、シンプルな調理なのに、いい味が出ていると思いませんか」。

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一品目が和っぽい料理だったが、二品目からは彼女のキャリアが物語るように中華メニューが登場した。焼売には兵庫県産の雪姫ポークと「金山寺味噌」が使われている。上にトッピングしているのは「金山寺味噌」に含まれている具材で、赤が瓜、黒が紫蘇、黄が大豆という具合いで彩られている。「金山寺味噌は、くどい甘さではなく程よい味。具を噛めば色々な味が楽しめることから、これだけで調味して焼売を作ってみたんです」。金山寺味噌が入るせいか、少し甘めは否めない。竹原さんは、「子供なら丁度いいが、大人ならもう少し塩味があってもいい」と「魯山人」醤油を漬けダレにした。当初は酢醤油でと思ったそうだが、「魯山人」醤油を味見してびっくり。「さらっとして舌に残らない!」と思ってこれだけで漬けダレにすることを決めた。「金山寺味噌は、茄子・瓜・紫蘇・生姜と、子供が嫌う素材が入っています。単体だと食べられなくても金山寺味噌にすることで不思議とそれらの具材を子供達が食べてしまいます。野菜を子供達に食べさせられるいい商品かもしれません」とお母さんらしい感想を述べていた。一方、竹原さんの「魯山人」醤油への思いは、なぜか郷愁と合わさっている。竹原さんが「今は蔵ごとなくなっている」という地元醤油の味を思い出したそうだ。「それにすごく似た味わいでした。子供の頃の醤油の味を思い出したんですよ」と話す。だから味見した時に、さらっとして舌に残らない独特の個性とともに、郷愁を誘った。「醤油の塩分はあるのに不思議とそれが主張しない。さらっとしているのでキュウリに漬けたら甘さが際立つかも…」と話している。竹原さんは、「焼売は蒸す手間がかかる」と、その簡単バージョンも披露してくれた。焼売と同じタネを丸めてフライパンで焼き、「魯山人」醤油を漬けて食べる。これならいつでも簡単にできるだろうとの提案である。

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本来、この二品のはずだったが、「どうしても作りたかった」と出して来たのがゴマ団子だった。白玉の生地に「魯山人」を混ぜて包み、粉をつけて揚げたそれは、生地に程良い醤油風味がついている。それが醤油味を主張するでもなく、ほんのりした味になっているのだ。竹原さんに聞くと、その調合がちょっと難しかったようだ。結局、粉250gに醤油大さじ2の配合で。醤油が多めに入っているようだが、しょっぱさを感じないのも「魯山人」らしさだろう。竹原さんは、白味噌で同じような品を作ったが、「魯山人を入れたバージョンには勝てなかった」と言っていた。ゴマ団子を頬張ると、あんの甘さもさることながら、生地についている醤油味が特徴的。一見、見過ごしがちな地味なものだが、噛むほどにその風味が頭をもたげて来る。ちょっぴり醤油風味で、甘いあんをうまく引き立てている_、そんなところがいい。

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ところで竹原さんは、色んなものを試作しながら明日(将来)への商品に備えている。先日は肉味噌を作った。高校卒の資格を取るために沖縄で勉強した。そんな経験から沖縄で食されている肉味噌を商品化しようと思い立ったのだ。「にんにく、生姜、唐辛子に兵庫県産の雪姫ポークを使って試作しています。ベースのだし味噌を来年ぐらいに商品にして販売しようと思っているんです」と話してくれた。主婦であり、母親であり、その経験をいかして必要となるソース類を商品化する。そんな考え方が身体に優しい無添加のものを生み出している。それが「FONTE」の個性でもあり、特徴の一つになっている。

  • <取材協力>
    ソース工房FONTE

    住所/神戸市東灘区向洋町中5-15リバーモールウエスト2階

    TEL/050-3715-4010

    営業時間/11:30~18:30

    休み/不定休

    メニューor料金/
    チョイスランチ 2品1000円、3品1200円
    おまかせランチ 2品1000円、3品1200円
    スペシャルランチ 2500円(6名から)
    ※ランチは要予約
    コーヒー 300円
    カフェラテ 350円
    SOYラテ 350円
    フレーバーティ 各種300円
    キッズドリンク 各種150円

    【オリジナルソース】
    高菜ラー油 550円
    超辛ラー油 550円
    食べるラー油 550円
    ねぎ塩ソース 550円
    玉ねぎソース 400円
    甘みそ 400円
    てりやきソース 400円
    なんばん甘酢 400円  etc


筆者紹介/曽我和弘
廣済堂出版、あまから手帖社、TBSブリタニカと雑誌畑ばかりを歩いてきて、1999年に独立、有)クリエイターズ・ファクトリーを設立した。特に関西のグルメ誌「あまから手帖」に携わってからは食に関する執筆や講演が多く、食ブームの影の仕掛け人ともいわれている。編集の他に飲食店や食品プロデュースも行っており、2003年にはJR西日本フードサービスネットの駅開発事業に参画し、三宮駅中央コンコースや大阪駅御堂筋口の飲食店をプロデュース。関西の駅ナカブームの火付け役となった。

湯浅醤油有限会社|世界一の醤油をつくりたい