2020年06月
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 コロナ禍は、まだまだ続く。緊急事態宣言を解除し、再開した飲食店の対応はまちまちで、未だにかつての勢いを取り戻せないようだ。新型コロナウイルスと、それによって影響された人達を取材していると、意外とコロナの特性を理解せずに恐れていることがわかる。飲食店がwithコロナ時代に取り組むべき対策と打ち出しているのを見ても「パーテンションは当たり前」「ウイルスに触れにくい工夫を」「店外へのアピールを」などなど、よくニュースで語られていることばかりだ。TVには新しいドラマもなく、バラエティも過去の映像を流すばかりでLIVE的にはコロナ問題一辺倒になっているのにも関わらず、まだまだ間違った認識を持つ人が多い。これほど関連情報を流しているのに単に怖がっているだけにすぎない。消費者も店側ももう一度コロナ情報を収集し、取捨選択しながらwithコロナ時代を生き抜くべきなのだが…。

  • 筆者紹介/曽我和弘廣済堂出版、あまから手帖社、TBSブリタニカと雑誌畑ばかりを歩いてきて、1999年に独立、有)クリエイターズ・ファクトリーを設立した。特に関西のグルメ誌「あまから手帖」に携わってからは食に関する執筆や講演が多く、食ブームの影の仕掛け人ともいわれている。編集の他に飲食店や食品プロデュースも行っており、2003年にはJR西日本フードサービスネットの駅開発事業に参画し、三宮駅中央コンコースや大阪駅御堂筋口の飲食店をプロデュース。関西の駅ナカブームの火付け役となった。
単に恐れるだけではなく、いかにしたら
元の日常を取り戻せるか?
店と大衆はその課題に向かって進むべき

鶏が先か、卵が先か。まずは店側が率先した姿勢を見せるべき

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新型コロナウイルスは、感染による被害者を出しただけではなく、日本経済に多大な影響を与えた。4月の緊急時代宣言に伴い、暫し休業を余儀なくされた店は、未だに立ち直れずにいる。「今後は、生活様式を変えて"withコロナ"の時代を生き抜きましょう」と言っているからか、店舗はその対策をふまえた営業を行っており、大衆も徐々にそれに慣れつつあるようだ。ただ心配なのは、シャッターが閉まったままの店が目立つこと。商業施設内には"空き店舗"の札がかなり出ており、約2カ月続いた自粛と休業要請は、多くの傷手を残したことを物語っている。
コロナ禍の飲食店を歩いて私なりに思ったことは、その考え方がまちまちであること。某飲食店は、緊急事態宣言の最中でも細々と営業を行っていたそうだ。店主に話を聞くと、「別に行政に逆らっていたわけではなく、家賃が派生するなら少しでも売上げを得ようとした。だからと言ってお客様は来てくれたかというと、そうではありません。たまに常連が覗いてくれるだけでしたが、自粛疲れにプロの料理が供給できれば、それだけでよかったんです」と話していた。その店は、コロナ対策融資が早々に通ったために少し心にゆとりが生まれたようで、苦しい状況ながらもかつての日々に戻るまで粛々とこれまでの営業形態を守っていくと話していた。

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「現在は、予約のみで営業を行っています」という店もある。接待中心だった高級店は、おいそれと客足は戻らないと踏んでいる。4~5店舗持つその店のオーナーは、開けても客足が見込めそうな店のみを営業し、それ以外は暫く休業。雇用調整助成金を活用することで従業員を維持し、もう少しの間は我慢の経営を続けるという。
このようにスタイルを変えぬ店もあるが、一方では早々と業態を変えてwithコロナの時代に臨む所も出て来ている。居酒屋スタイルは、withコロナ時代にしんどかろうと、スピードのある単品勝負の店に変えるというのだ。例えば、ラーメン、うどんの類がその例。客単価が下がっても回転率を高めることで売上げを維持させたいと考えている。テイクアウトや宅配を強化した店もある。仕出しの拠点を設け、そこで宅配用の弁当を作って配達する。リモートで自宅で仕事をする人が増えたからだろう、宅配需要は高まりを見せている。街中でUber Eatsや出前館の自転車をよく見かけるようになった。

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コロナ禍の今、時短営業を行ったり、メニューを絞って営業している店が目立っている。従業員やアルバイトを解雇したので人員的に満足な営業ができない所を除けば、私は早く元の形に戻すべきだと考えている。まず時短にして自粛を続ける意味がない。これまで夜23時まで開けていて常にその時間帯でも席が埋まっていた某カフェが、今では19時閉店になっている。夜の世界からコロナ陽性者が出るのは別の話で、コロナ対策をきちんと行っておれば通常営業に戻した所で心配はないはずだ。夜になると、感染が高まるわけではないのだから。メニューを絞っている店にも私は、スタッフが揃わない等の問題がない限り早く元に戻すべきとアドバイスしている。なぜなら自粛疲れで店に足を運ぶ人達は、そこの店に普段出していた料理を所望する。そしてメニュー表の中から自由に選択して味わいたいと考えているからだ。「今はしんどい時期なのでこれくらいの数でいいだろう」は、店側の勝手な言い分。仮りに一度は訪れてもがっかりしてしまっては、次の来店機会を失う。元の生活に戻りたいがために来ているのが、以前のような店でなくなったなら次のチャンスはいつやって来るのかわからない。それくらい大衆は、その店に固執していない。私が話した所は、店側の自粛メニューを約1か月間でやめてしまい、6月半ばや7月からは、元の状態に戻しているのが多い。某店の人に聞くと「お客様からいつからコース料理が食べることができるの?と聞かれました」と返って来た。鶏が先か卵が先かじゃないけれど、大衆の動向を待って営業するよりは、店が率先して客に提案していく方がいい。そうしなければ他の店に取られるだろうし、これがwithコロナの時代のまず初めの攻めのスタイルでもある。

どうして正しい知識を得ようとせず、マスク警察が現れるのか

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私は店々だけではなく、今回のコロナ不況の因を医師などにも取材して歩いている。新型コロナウイルスの本性がわからない、ワクチンや治療薬がない状態で、恐れはしなければならないものの、ビクビクして生活に支障をきたさねばならぬほど怖がる必要があるのだろうか。政府の言う通り医療崩壊を起こしては大変である。その辺りは行政や医療の従事者に任せるとして、我々はコロナ禍の真実をきちんと見極めることから始めるべきで、それに合った行動をし、経済を動かせることが肝要なのだ。例えば、和歌山での初コロナ陽性者は湯浅町の病院から出た。その感染経路はわかっており、コロナ自体はこの町ではすでに収束している。というより陽性者は、病院に勤めていた人で、湯浅町住民からは全くそれが出ていないのである。なのに湯浅町では観光客が激減している。まさに風評被害といわざるをえない。夜の街の感染者から陽性が出続ける首都圏の街ならいざ知らず、田舎町にはコロナは無縁。そんな場所への移動を躊躇してどうなる。
新型コロナウイルスについては、まだまだわからないことがあるが、春先よりはわかっていることが多くなっている。新型コロナウイルスは、唾液によって感染するらしい。なので長時間のおしゃべりや、大声をあげるなどの行為は危険とされている。ましてや頻繁にキス行為が行われる夜の街は危険と思われても仕方がない。マスクはそのためにあり、自らが発する唾液を止めるためにつけるのだ。だから自分が咳やくしゃみをしない、大声を出さない(しゃべらない)ならばつける必要はないと思われる。マスクをすることでウイルスが入って来ないなんて妄想に近く、マスクの隙間からは残念ながら入ってしまうのだ。猛暑により熱中症の方が心配なので、外でも自分がしゃべらなければマスクをつける必要はないのだろう。ましてや一人だけで車を運転しているのに車中でマスクをしている人なんて論外といえよう。かといってマスクは、必要ないかといわれればそうではなく、しているに越したことはない。要は各々特性を理解し、きちんと怖がればいいのである。

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現在、三密は避けようというのがwithコロナの時代には当たり前のように言われている。夜の街で感染が広がっているのも事実だが、お上が注意を促す接待を伴う店との表現もどうだかと思う。人によっては接待を禁止しているように聞こえるらしい。一時はバーもその対象とされていたが、オーセンティックバーは決してそうではない。人によっては一人で黙々と酒を楽しんでいる場合もあり、そんな雰囲気が本当危険なのかと緊急事態宣言時に疑ってしまった。元来、バーとは静かなもので、しゃべった所でそう騒いだりしない。なのに一時はバーも危険といわれ、やり玉にあがっていた。オーセンティックバーこそ、その被害者であろう。
先日、私は神戸の老舗料理店で食事をした。店側はコロナ対策よろしく、換気をよくし、入店時には客に手の吹きかけるアルコール消毒を促し、使った後のテーブルなどはこまめにふいて消毒している。お金はトレイに入れて受け渡し、いつものように笑顔で迎え、送り出す。それでいいのだ。そこには過剰な恐れなどはなく、時短営業もメニューを絞ることもない、いつも日常があった。我々は元の日常を求めて飲食店に通っている。コロナウイルスの特性を理解し、きちんと怖がって生きて行く_、そんな行為がwithコロナ時代には必要なのだろう。やがてワクチンができて、特効薬が開発されるその日までもう少し頑張ってみよう。

湯浅醤油有限会社|世界一の醤油をつくりたい